歩行という思考法——アリストテレスからニーチェまで
会議室で唸っても出ない答えが、散歩の途中で降りてくる。神経科学と二千年の哲学史が指す同じ結論——歩行は思考の別形式である。
ジョージ・オーウェルが一九四九年に刊行した長編小説。核戦争後の超国家オセアニアで、党と指導者ビッグ・ブラザーがあらゆる生活を監視する。真理省に勤める下級党員ウィンストン・スミスは、禁じられた日記を書き、党員ジュリアと恋に落ち、地下組織を探すが、全ては党の仕掛けだった。拷問と洗脳の末、彼は「ビッグ・ブラザーを愛していた」と呟いて破滅する。
過去5億年で地球は5回の大量絶滅を経験した。オルドビス紀末・デボン紀後期・ペルム紀末(史上最大、生物種の90%以上が絶滅)・三畳紀末・白亜紀末である。白亜紀末の隕石衝突で恐竜が絶滅し、隙間に哺乳類が進出して我々人類に繋がる進化経路が開いた。支配者が消えることで初めて新勢力が台頭する条件を示す。
2001年9月11日、イスラム過激派組織アルカイダによる航空機を使った同時多発テロ。ニューヨーク世界貿易センタービルとペンタゴンが攻撃され、約3000人が犠牲となった。冷戦終結後の世界秩序を「テロとの戦い」に転換させた決定的事件。
1517 年 10 月 31 日、ルターがヴィッテンベルク城教会の扉に貼り出したとされる 95 項目の神学論題。ラテン語で書かれ、教皇が販売を認めた免罪符の神学的欠陥を論駁するもの。印刷術の普及により数週間でドイツ全土、数ヶ月でヨーロッパに広まった。
拡散モデルやGANなどの機械学習アルゴリズムが生成した画像・映像・音楽の総称。2022年のStable Diffusion公開以降、一般普及が加速した。人間の創造性とは何かという哲学的問いと、著作権・労働の再定義という法的・経済的問題を同時に提起している。
AI(人工知能)の設計・運用・社会的影響に関わる倫理的問題を扱う応用倫理学の領域。2010年代の機械学習の爆発的進歩により、アルゴリズムのバイアス、ブラックボックス化、説明責任、プライバシー、自律兵器、雇用代替などが緊急の論点となった。EUのAI Actなど法制度化も進み、企業のAIガバナンスは経営課題となっている。
1969年、米国防総省高等研究計画局(ARPA)の予算で構築された実験的コンピュータネットワーク。パケット交換方式と分散制御を採用し、核攻撃に耐える通信網として構想された。TCP/IP(1983年採用)を経て現代インターネットに発展し、グローバルな情報基盤の礎となった。
2012年、ジェニファー・ダウドナとエマニュエル・シャルパンティエが実用化したゲノム編集技術。細菌の獲得免疫機構CRISPRと核酸切断酵素Cas9を用い、任意のDNA配列を精密に切断・編集できる。医療・農業・生命科学を変革し、2020年に両者にノーベル化学賞が授与された。倫理的課題も同時に問われている。
1953年4月、ジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックが『ネイチャー』誌で発表したDNAの二重らせん構造モデル。ロザリンド・フランクリンのX線回折像を手がかりとし、AT・GC塩基対の相補的結合による遺伝情報の複製メカニズムを示唆した。以後の分子生物学とバイオテクノロジーの基軸となった。
1953年のワトソン・クリックによる二重らせん構造発見を受け、その複製機構が解明された。二本鎖の各鎖を鋳型として新鎖を合成する半保存的複製が基本原理。DNAポリメラーゼを中心とする酵素群が協働し、約30億塩基対をほぼ無誤りで複製する生命の根幹的機構である。
Google(2024年にAlphabet)・Apple・Facebook(現Meta)・Amazonの米国巨大IT企業4社を指す呼称。21世紀初頭に急成長し、インターネット上の検索・スマホ・SNS・ECというインフラを握ることで、世界の消費・情報流通・広告市場を再編した。
2006年、京都大学の山中伸弥らが発表した人工多能性幹細胞(induced Pluripotent Stem Cell)。皮膚などの体細胞に4因子(Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Myc)を導入し、受精卵由来のES細胞に匹敵する多能性を誘導した。倫理的問題と免疫拒絶を回避した再生医療・創薬研究の基盤となり、2012年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。
1983年、カリー・マリスが考案した核酸増幅法。変性・アニーリング・伸長の3ステップを繰り返し、標的DNA断片を指数関数的に増幅する。感染症診断・法医学・農業・食品検査まで広く普及し、現代バイオテクノロジーの汎用基盤技術となった。
水素イオン濃度の逆数の常用対数として1909年にデンマークの生化学者セーレン・セーレンセンが定義した。0〜14の対数スケールで酸性・中性・塩基性を表し、7が中性。血液・土壌・食品・工業プロセスの管理に不可欠な計測指標。微小な数値変化が大きな性質変化を意味する対数的性質が特徴。
約40億年前の原始地球において、現在DNAとタンパク質が分担している『情報の保存』と『触媒作用』の両機能を、RNAが単独で果たしていたと提唱する仮説。1960年代にカール・ウーズらが萌芽的アイデアを示し、リボザイムの発見(1982年)により実験的根拠を得た。現代の生命科学における生命起源論の主流的枠組みである。
英国人作家ジェームズ・クラベルが1975年に発表した歴史小説。英国人航海士ジョン・ブラックソーンが戦国末期の日本に漂着し、大名・虎長(とらなが)と関係を結んでいく過程を軸に、武士道・忠義・権力闘争を描く。実在の人物ウィリアム・アダムズと徳川家康をモデルにしており、2000万部超の世界的ベストセラーとなった。
1895年11月8日、ドイツの物理学者ヴィルヘルム・コンラート・レントゲンがヴュルツブルク大学の実験中に偶然発見した電磁波。軟組織を透過し骨を写し出す性質が医療に革命をもたらした。1901年、第1回ノーベル物理学賞を受賞している。
1925年のパリ現代装飾美術・産業美術国際博覧会(アール・デコ展)を起点に、1920-30年代に世界を席捲した装飾様式。アール・ヌーヴォーの曲線性を退け、直線・対称・幾何学形態、ジグザグ・放射・流線形を特徴とする。ニューヨークのクライスラー・ビル、エンパイア・ステート・ビル、豪華客船、映画館、香水瓶まで広く浸透した。
1890年代から1910年頃まで欧州で流行した装飾芸術・建築運動。産業革命後の量産品の画一性への反発として、植物や昆虫に想を得た有機的曲線、総合芸術の理念を前面に出した。パリのギマール、ウィーンのクリムト、バルセロナのガウディ、ナンシー派(ガレ)、英国アーツ・アンド・クラフツから流入した工芸思想が土壌となった。
フランス語で「生の芸術」を意味する。1945年にジャン・デュビュッフェが命名。精神病院の患者、囚人、霊媒師など美術教育を受けていない人々の作品を指す。文化的文脈や商業的意図を排した純粋な表現衝動として、現代美術の制度そのものを問い直す概念でもある。
1845〜52年、ジャガイモ疫病がアイルランドを壊滅させ、約100万人が死亡・150万人以上が移住した。英国政府は自由放任主義を優先して救済を怠り、植民地的農業構造が被害を拡大した。飢饉はアイルランドの人口・文化・政治を根本から変え、独立運動の遠因ともなった。
北アフリカ出身の教父アウグスティヌスが 400 年頃に執筆した自伝的著作。幼少期の悪戯から、マニ教への傾倒、放蕩、母モニカの祈り、ミラノでの回心までを神への告白として語る。『世界初の自伝』として、ルソー『告白』、近代小説の心理描写に決定的影響を与えた。
美術教育や制度的な文脈の外に置かれた作り手——精神障害者・囚人・独学者・霊的ビジョンを持つ者——による制作物の総称。デュビュッフェが提唱したアール・ブリュット(生の芸術)の英語圏での呼称として定着した。制度の外からこそ生まれる表現の純粋さと、その評価をめぐる逆説を孕む概念である。
前29〜前19年にウェルギリウスが著した12巻のラテン語叙事詩。トロイア滅亡後のアエネーアスのイタリア建国を描く。ホメロスを範としながら、義務(ピエタス)と運命(ファトゥム)の緊張を主題の核に据え、ヨーロッパ文学の正典となった。
ブルーノ・ラトゥール(1947-2022)、ミシェル・カロン、ジョン・ローらが1980年代以降に展開した科学社会学・社会学の理論。人間だけでなくモノ・技術・微生物・法律などの非人間をも『アクター』(行為者)として対称的に扱い、それらが織りなすネットワークとして社会を記述する。科学実験から組織・政治まで射程とする。
1428年に三同盟を基盤として成立。メキシコ高原の250以上の都市国家を間接支配し、首都テノチティトランは人口20万超の巨大都市へと成長した。宗教儀礼と軍事力を統治の両輪とし、1521年にエルナン・コルテス率いるスペイン軍に滅ぼされた。
古代ギリシャ語で「乱されないこと」を意味する哲学的概念。エピクロスは肉体の苦痛なき状態(アポニア)とともにアタラクシアを至高の善とした。ピュロン主義は判断停止(エポケー)によってアタラクシアに到達するとした。ともに外的条件への依存からの独立という問題意識を共有する。
19世紀アメリカのリバイバル運動から生まれたプロテスタント系潮流。ウィリアム・ミラーの再臨予言と1844年の「大失望」を経て成立。セブンスデー・アドベンティスト教会が最大教派で、現在約2000万人の信者を擁す。再臨の切迫、土曜安息日、魂の状態論などを独自教義とする。
ロバート・ノージック(1938-2002)が1974年に刊行した政治哲学の古典。ロールズの『正義論』への応答として、個人の権利を絶対視する立場から『最小国家』(夜警国家)こそ唯一正当化される国家だと論じた。権原理論・所有権の強い擁護・再分配への原理的反対を展開し、リバタリアニズムの哲学的基礎を確立した。
1871年、人類学者タイラーが著書『原始文化』で提唱した概念。山・川・動植物など自然界のあらゆる存在に霊魂(アニマ)が宿るとみなす信仰形態を指す。宗教の最古層とされ、シャーマニズムや精霊信仰と密接に絡む。日本の神道や縄文信仰もその系譜に位置づけられる。
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