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概要
確証バイアスは、能動的な情報探索、受動的な情報処理、記憶の三局面で働く。ワゾンの四枚カード問題以来、論理的課題でさえ反証的探索が人間には自然でないことが繰り返し示されてきた。
このバイアスは無知や怠慢の問題というより、社会的な理由づけに適応した推論の副産物だとする見解もある(メルシエとスパーバーの論議的推論理論)。同じ機構が議論の場では集合的検証として機能しうる。
効果サイズは文脈に依存し、単純な啓発では消えないことも知られている。
メカニズム
情報探索では、仮説と一致する側のデータばかりを尋ねる傾向がある。医師は想定した診断を支持する症状を、投資家は保有銘柄を支持するニュースを、採用担当は好印象の候補者を支持する経歴を探しやすい。
情報処理では、一致情報は額面通り受け取られ、反証情報は細部の難癖で割り引かれる。同じ証拠でも、既有信念によって逆方向の結論を引き出す動機づけられた推論が生じる。
記憶段階では、信念に一致する情報がより強く再想起される。結果として、時間の経過とともに記憶そのものが信念の側に寄っていく。
意義
確証バイアスは、純粋な情報収集と解釈が幻想であることを示す。合理的判断の仕組みは、個人の意志よりも外部構造に依存する。
科学の査読、法廷の対審、民主主義の複数政党制などは、個人のバイアスを制度的に補正する工夫として理解できる。
現代への示唆
戦略議論に反証役を配置する
肯定的なストーリーを補強し合う会議は、心地よいが危うい。反証を職務として担う役割——ディスカッションリーダー、レッドチーム、外部取締役——を構造に組み込むことが、バイアスへの現実的な対抗策となる。
事前検死を儀式化する
意思決定後ではなく、意思決定前に「この案が失敗したとしたら何が原因だったか」を想像させる事前検死は、反証探索を制度化する技法である。数十分の投資で、多くの後悔を予防できる。
デューデリジェンスを分離する
提案者自身に反証材料の収集を任せると、確証バイアスが構造的に働く。推進役と検証役を人的に分けることは、単なる形式ではなく認知的な必要である。
関連する概念
- [二重過程理論(システム1/システム2)]( / articles / dual-process-theory)
- アンカリング効果
- 動機づけられた推論
- 集団思考
- メタ認知
参考
- Nickerson, R. S. “Confirmation Bias: A Ubiquitous Phenomenon in Many Guises”, Review of General Psychology, 2(2), 1998
- Mercier, H. & Sperber, D. The Enigma of Reason, Harvard UP, 2017