アンカリング効果と価格提示——最初の数字が全てを決める
最初に提示された数字は、その後のすべての判断の基準点になる。アンカリング効果の科学と、見積り設計への応用、そして誠実な価格提示の条件を考える。
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辞書項目(10)
アンカリング効果は、判断に先立って呈示された数値や情報(アンカー)が、たとえ無関係であっても後続の推定や評価に系統的な影響を及ぼす現象である。トヴェルスキーとカーネマンによる実験以降、交渉、価格決定、量刑判断、医療推定など多領域で確認され、意思決定環境の設計に大きな含意を持つ。
確証バイアス(confirmation bias)は、既に持っている仮説や信念を支持する情報を選択的に集め、強く記憶し、好意的に解釈する一方で、反証する情報を軽視・無視・歪曲する傾向である。科学的推論、政治的判断、経営意思決定まで幅広く観察され、討議設計やレビュー体制に深い含意を持つ。
二重過程理論は、人間の認知を自動的・直感的なシステム1と、意図的・熟慮的なシステム2の二種類の過程として描く枠組みである。速く省力のシステム1が多くの判断を担い、労力と時間を要するシステム2がそれを部分的にチェックする。カーネマンの著作を通じて広く知られた。
ダニング・クルーガー効果は、ある領域で能力の低い者ほど自分の能力を過大評価し、能力の高い者ほど控えめに評価する傾向として知られる。一九九九年のダニングとクルーガーの論文で定式化された。メタ認知の欠如を本質とする解釈が広まる一方、統計的アーティファクトとしての側面にも方法論的議論がある。
ハロー効果(halo effect)は、対象の一つの顕著な特性——外見、肩書、学歴、過去の業績など——が、他の属性の評価にも波及して、全体像が整合的な方向に歪められる傾向である。ソーンダイクが一九二〇年代に兵士評価で発見し、採用・評価・ブランド評価・研究評価まで広く観察される。
学習性無力感(learned helplessness)は、セリグマンとメイヤーが一九六七年にイヌを用いた実験で報告した現象で、制御不能な嫌悪刺激への反復曝露が、後の状況での能動的回避行動を抑制する。抑うつや組織的機能不全の理解に応用され、その後の研究では「受動性が初期設定であり、制御可能性の学習こそ重要」とする再定式化が進んでいる。
ナッジ(nudge)は、選択を禁止せず経済的誘因も大きく変えないまま、意思決定環境の設計によって人々を予測可能な方向に促す手法である。リチャード・セイラーとキャス・サンスティーンが同名の著書で体系化し、公共政策から企業制度まで広く応用されてきた。効果と倫理両面で議論が続いている。
プロスペクト理論は、ダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキーが一九七九年に提示した、リスクを伴う意思決定の記述的理論である。期待効用理論の規範的仮定とは異なり、人は参照点に依存し、同じ大きさの損失を利得より強く感じ、低確率を過大評価する傾向を持つことを実証的に示した。
現状維持バイアス(status quo bias)は、既存の状態から変化することに対して、変化の期待利得を上回る抵抗感を持つ傾向を指す。サミュエルソンとゼックハウザーが定式化し、損失回避、後悔回避、デフォルト効果、選択の過負荷などを背景として説明される。政策、医療、投資、組織意思決定に広く現れる。
サンクコストの誤謬(sunk cost fallacy)は、既に支出し回収不能になったコストが将来の意思決定を左右すべきではないにもかかわらず、それに引きずられて損失を拡大する判断を続ける傾向を指す。ダム事業、軍事介入、システム投資、新規事業の撤退判断など、実務的影響は大きい。