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現代
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安藤忠雄
大阪生まれの建築家。元プロボクサー、独学で建築を修めた異色の経歴を持つ。住吉の長屋、光の教会、水の教会、直島のベネッセハウスと地中美術館など、打放しコンクリートの禁欲的な幾何学と、自然光・水・風の繊細な取り込みを統合した作品群で、1995年プリツカー賞を受賞。日本現代建築の世界的顔である。
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不条理
アルベール・カミュ(1913-1960)が哲学的エッセイ『シーシュポスの神話』(1942)で定式化した概念。不条理(absurde)は世界の中にあるものでも人間の中にあるものでもなく、『意味と統一を求める人間の叫び』と『理不尽な沈黙を返す世界』との対峙から生まれる関係だと論じた。このとき『自殺すべきか』が哲学の唯一の真に重大な問題となる。カミュの答えは自殺でも飛躍(宗教)でもなく、不条理を引き受けて『反抗』しつつ生きること。岩を山頂へ運び続けるシーシュポスを『幸福だと想像しなければならない』。
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人間の条件
ハンナ・アーレント(1906-1975)が1958年に刊行した政治哲学の古典。人間の活動的生(vita activa)を労働(labor)・仕事(work)・活動(action)の三つに区分し、近代以降『労働』が支配的となり公共の活動が衰退した過程を描いた。公共性・複数性・始まりの奇跡を論じ、20世紀後半の政治思想に決定的影響を与えた。
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ベイズ主義
トーマス・ベイズ(1701-1761)の定理に基づく認識論。知識を『真か偽か』でなく『確率的信念』として扱い、事前確率に新しい証拠を掛け合わせて事後確率に更新する。20世紀後半、カルナップ、ジェフリーズらが哲学基盤を整備し、現代の統計学・機械学習・意思決定論の基礎となった。『信念を確率で更新する』思考フレーム。
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存在と時間
マルティン・ハイデガー(1889-1976)が1927年に刊行した20世紀哲学の最重要著作の一つ。『存在とは何か』という古代からの問いを、『人間存在(現存在)』の分析を通じて再構成。『死への存在』『不安』『世人(das Man)』などの概念で、我々が日常に埋没して本来の生を忘れる構造を暴いた。実存主義、現象学、現代思想の水脈を決定づけた未完の大著。
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ベルリンの壁 ― 建設と崩壊
1961年8月、東ドイツが東ベルリンを囲む形で築いた全長155kmの壁。西側への人口流出を阻むために建設され、28年間にわたり冷戦の分断を象徴した。1989年11月9日の崩壊は、東欧革命とソ連解体の引き金となった。
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ブラック・スワン
ナシーム・ニコラス・タレブ(1960-)が2007年刊『The Black Swan』で提示した概念。(1)予測不可能、(2)極端な影響、(3)事後的には説明される——この3条件を満たす稀有な事象。正規分布を前提とするリスク管理の盲点を突き、金融危機・パンデミック・テロを説明。続編『反脆弱性』は想定外を力に変える原理を論じた。
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ケアの倫理
発達心理学者キャロル・ギリガン(1936-)が1982年『もうひとつの声で』で提唱した倫理学の立場。コールバーグの道徳発達理論が『正義の倫理』を頂点とし女性を低く評価していたことを批判し、女性が多く示す『ケアの倫理』——具体的な関係性・責任・文脈への配慮を評価する倫理——を対置した。フェミニズム倫理学の基礎を築き、医療・教育・介護・経営へと応用が広がっている。
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中国の改革開放
1978年12月の中国共産党第11期三中全会で鄧小平が主導した、計画経済から市場経済への転換と対外開放政策。経済特区の設置、農村の家族請負制、外資導入により、中国は40年で世界第2位のGDP大国へと変貌した。
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冷戦構造の形成
第二次世界大戦終結直後から1989年前後まで続いた、米国を中心とする西側資本主義陣営とソ連を中心とする東側社会主義陣営の対立構造。核兵器の存在により全面戦争は回避されつつ、代理戦争・軍拡競争・イデオロギー闘争が世界規模で展開された。
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複雑系
20世紀後半に物理学・生物学・経済学の境界で発展した学際領域。サンタフェ研究所(1984-)が拠点。多数の要素が単純なルールで相互作用するとき、部分の総和を超えた全体的性質(創発)が現れる。アリのコロニー、脳、都市、経済、生命——従来の還元主義では捉えられないシステムを扱う新しい科学哲学。
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コロナ・パンデミック
2019年末に中国武漢で確認された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が、2020年3月にWHOからパンデミック宣言され、世界を同時に経済停止させた事件。感染症危機にとどまらず、リモートワーク・デジタル化・サプライチェーン再編など、社会と組織のあり方を構造的に変えた。
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キューバ危機
1962年10月、ソ連がキューバに核ミサイルを配備していることが米国偵察機により発覚し、13日間にわたり米ソが核戦争寸前まで対峙した事件。ケネディ政権の決断過程は、危機管理と集団意思決定の古典的研究対象となった。
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サイバネティクス
ノーバート・ウィーナー(1894-1964)が1948年刊『サイバネティックス——動物と機械における制御と通信』で創始した学際領域。フィードバックループ、情報、制御を鍵概念とし、生物と機械を同じ原理で記述した。現代のAI、ロボティクス、システム科学、経営組織論の源流。タイトルはギリシャ語κυβερνήτης(舵取り)に由来。
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差異と反復
ジル・ドゥルーズ(1925-1995)が1968年に刊行した博士論文・主著。プラトン以来の西洋哲学が『同一性』に特権を与え、差異を『二項間の差』に還元してきたと批判。差異はそれ自体として、反復を通じて現れると論じた。ニーチェの永劫回帰、ベルクソンの持続、スピノザの一義性などを縦横に参照し、『差異の哲学』という新たな存在論を構築。後のガタリとの共著『アンチ・オイディプス』『千のプラトー』でリゾーム・ノマド論へ展開し、20世紀後半のポスト構造主義を牽引した。
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デュエム=クワイン・テーゼ
ピエール・デュエム(1861-1916)が提起し、ウィラード・クワイン(1908-2000)が拡張した科学哲学のテーゼ。仮説は単独でテストできず、常に『補助仮説の束』と共に検証される——反証が出ても、どの仮説が誤っていたかは一意に定まらない(反証の不確定性)。ポパー反証主義への強力な反論であり、全体論的知識観の基礎。
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エルサレムのアイヒマン
ハンナ・アーレント(1906-1975)が1963年に刊行した、ナチス親衛隊将校アドルフ・アイヒマンのエルサレム裁判の傍聴記録。副題は『悪の陳腐さについての報告』。ユダヤ人600万人虐殺の実務責任者を、冷酷な怪物ではなく『思考停止した平凡な官僚』として描き、『悪の陳腐さ(banality of evil)』という概念で世界に衝撃を与えた。組織悪を論じる際の基本文献。
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実存は本質に先立つ
ジャン=ポール・サルトル(1905-1980)が1946年の講演『実存主義はヒューマニズムである』で宣言した実存主義の中心命題。紙切りナイフのような道具は『切る』という本質が先に決まってから作られるが、人間はまず存在し、後から自らの行為によって自分が何者かを決める。自由と責任が不可分であることを示し、戦後世代の思想的指針となった。
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反証可能性
カール・ポパー(1902-1994)が『科学的発見の論理』(1934)で提示した科学哲学の中心概念。科学的仮説は『正しいと証明できる』のではなく、『間違っていたら棄却される条件が明確である』ことで科学となる。帰納法の問題を乗り越え、マルクス主義・精神分析を『非科学』と断じた基準。事業仮説の正しい検証法の原型。
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方法への挑戦
パウル・ファイヤアーベント(1924-1994)が1975年に刊行した『方法への挑戦』(Against Method)。科学史を精査し『絶対の方法ルールは存在しない』と結論。ガリレオもニュートンも時に『非合理』な手段で科学を進めたと論じ、『何でもあり』(anything goes)と宣言。方法論の多元主義と、科学の権威主義への痛烈な批判。
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監獄の誕生
ミシェル・フーコー(1926-1984)が1975年に刊行した権力論の金字塔。副題は『監視と処罰』。残虐な身体刑から近代監獄への移行を分析し、権力が禁止ではなく『規律』として人を作り上げる仕組みを解明した。ベンサムのパノプティコンを比喩に、学校・工場・軍隊・病院が同型の規律装置として機能する近代社会の姿を描いた。
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GAFAの台頭
Google(2024年にAlphabet)・Apple・Facebook(現Meta)・Amazonの米国巨大IT企業4社を指す呼称。21世紀初頭に急成長し、インターネット上の検索・スマホ・SNS・ECというインフラを握ることで、世界の消費・情報流通・広告市場を再編した。
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状況に置かれた知
ダナ・ハラウェイ(1944-)が1988年論文『状況に置かれた知——フェミニズムにおける科学の問題と部分的視点の特権』で提示した概念。『どこにもない視点』(無の視点)からの客観性を否定し、すべての知は具体的身体・歴史・位置から生まれると論じた。単なる相対主義ではなく『位置の責任』による部分的客観性を提唱。
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隷従への道
フリードリヒ・ハイエク(1899-1992)が1944年に刊行した政治経済学の名著。社会主義的計画経済は善意から出発しても必然的に全体主義に帰結するという主張を、知識の分散性と価格メカニズムの不可欠性から論証した。第二次大戦期に書かれ新自由主義の思想的支柱となり、サッチャー・レーガン時代の政治転換に直接影響を与えた。
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技術への問い
マルティン・ハイデガー(1889-1976)が1953年にミュンヘンで行った講演『技術への問い(Die Frage nach der Technik)』。後期ハイデガーの代表作の一つ。技術は単なる道具や手段ではなく、世界の現れ方を規定する『存在の開示様式』であると論じた。現代技術の本質を『総かり立て体制(Gestell)』と名付け、人間と自然を『用立て可能な資源』として立てさせる仕組みとして批判。技術の外に立つのではなく、技術の本質を思惟することでのみ『救いの力』が生まれると説いた。現代技術論・生態哲学・AI倫理の原点。
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解釈学的循環
テキストの一節を理解するには作品全体の文脈が必要で、全体を理解するには個々の部分が必要——この循環構造を解釈学的循環という。ガダマーは『真理と方法』でこれを人間理解の根本構造とし、先入見を排するのでなく、先入見を持ちつつ対話の中で更新していく過程として描いた。経営における現場と全体戦略の往復運動のモデルとなる。
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本田宗一郎と世界戦略
本田技研工業創業者(1906-1991)。小学校卒の町工場主から出発し、二輪で世界一、四輪でF1と米国市場を制覇する企業を一代で築いた。盟友・藤沢武夫との役割分担と、技術への徹底した執念が特徴。
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インターネット商用化
冷戦期の軍事・学術用途から出発したインターネットが、1990年代の商用化を経て世界の社会基盤へと変貌した過程。TCP/IPの標準化、Webの発明、ブラウザの普及、ISP事業の成立という技術的・制度的連鎖が、産業構造と情報流通を根本から書き換えた。
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バブル崩壊と失われた30年
1989年末にピークをつけた日本の株式・不動産バブルが1990年から崩壊し、以後2020年代まで続く長期低成長の出発点となった事象。デフレ、金融システム不安、雇用・賃金の停滞が複合し、「失われた30年」と呼ばれる。
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高度経済成長と所得倍増計画
1955年から1973年のオイルショックまで、日本経済が年平均10%近い成長を続けた時期。1960年に池田勇人内閣が打ち出した「国民所得倍増計画」は、10年で国民所得を2倍にする目標を掲げ、実際にはそれを4年前倒しで達成した。
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朝鮮戦争と特需
1950年6月から1953年7月まで続いた、朝鮮半島における南北両政府とその背後の国連軍・中国人民志願軍の戦争。冷戦がアジアに波及した最初の熱戦であり、同時に日本経済に戦後復興の起爆剤となる「特需」をもたらした。
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アクターネットワーク理論
ブルーノ・ラトゥール(1947-2022)、ミシェル・カロン、ジョン・ローらが1980年代以降に展開した科学社会学・社会学の理論。人間だけでなくモノ・技術・微生物・法律などの非人間をも『アクター』(行為者)として対称的に扱い、それらが織りなすネットワークとして社会を記述する。科学実験から組織・政治まで射程とする。
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リーマン・ショック
2008年9月15日、米投資銀行リーマン・ブラザーズが連邦破産法適用を申請して破綻し、これを契機に世界的金融危機が表面化した事件。サブプライムローン問題を震源とする信用収縮が実体経済に波及し、戦後最大の世界同時不況を招いた。
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他者の顔
エマニュエル・レヴィナス(1906-1995)が『全体性と無限』(1961)などで展開した倫理哲学の中心概念。リトアニア出身のユダヤ人哲学者でナチスに家族を殺害された経験を持つ彼は、西洋哲学の『全体性』志向(他者を自分の理解に還元する暴力)を批判し、『他者の顔』との非対称な出会いこそが倫理の原点だとした。『倫理は第一哲学である』という宣言で20世紀思想を塗り替えた。
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全体性と無限
エマニュエル・レヴィナス(1906-1995)が1961年に刊行した主著(博士論文)。リトアニア出身のユダヤ系哲学者として、ハイデガーの存在論と西洋哲学全体が『全体性』——あらゆる差異を同一性に回収する思考——に陥ってきたと批判。これに対し、私に語りかけ倫理的応答を要求する『他者の顔(visage)』は、全体性の外部からやってくる『無限』であると論じた。ホロコースト経験に裏打ちされた他者論は、デリダ、リオタール、柄谷行人らに決定的影響を与え、20世紀後半の倫理思想を刷新した。
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美徳なき時代
アラスデア・マッキンタイア(1929-)が1981年に刊行した倫理学書。原題は『After Virtue』。近代啓蒙以降の倫理学(カント・功利主義)は、徳と共同体の文脈を失った結果、共通の道徳的言語を持たない『情緒主義』に陥ったと診断し、アリストテレス=トマス的徳倫理の復権を訴えた。共同体主義(コミュニタリアニズム)の旗手として、ロールズ的リベラリズムに対抗する論陣を張った。
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マーシャル・プラン
1948年から4年間、米国が西欧16カ国に約130億ドル(現在価値で1500億ドル超)を投じた復興援助計画。国務長官ジョージ・マーシャルの提案にちなむ。荒廃した西欧経済を復活させ、共産主義の浸透を防ぐ封じ込め戦略の経済的支柱となった。
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松下幸之助の経営哲学
松下電器産業(現パナソニック)創業者(1894-1989)。小学校中退・丁稚奉公からの叩き上げで、一代で世界的企業を築いた。「水道哲学」「事業部制」「ダム経営」「衆知を集める経営」など、日本式経営の基本概念の多くを言語化した。
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盛田昭夫とソニーの誕生
ソニー共同創業者(1921-1999)。技術の井深大とマーケティングの盛田昭夫という二人三脚で、戦後日本のエレクトロニクス産業を世界に押し上げた。ウォークマンやトリニトロンで「Made in Japan」の価値を転換させた。
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アナーキー・国家・ユートピア
ロバート・ノージック(1938-2002)が1974年に刊行した政治哲学の古典。ロールズの『正義論』への応答として、個人の権利を絶対視する立場から『最小国家』(夜警国家)こそ唯一正当化される国家だと論じた。権原理論・所有権の強い擁護・再分配への原理的反対を展開し、リバタリアニズムの哲学的基礎を確立した。
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オイルショック
1973年の第四次中東戦争を契機とする第一次石油危機と、1979年のイラン革命を契機とする第二次石油危機。原油価格の急騰により先進国経済は深刻なインフレと景気後退に陥り、日本の高度経済成長は終焉を迎えた。
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パラダイムシフト
トマス・クーン(1922-1996)が『科学革命の構造』(1962)で提示した科学変化の理論。科学は漸進的な積み上げではなく、『通常科学』の安定期と『科学革命』による非連続的な転換の繰り返しとして進む。プトレマイオス→コペルニクス、ニュートン→アインシュタインのような転換を『パラダイムシフト』と呼び、ビジネス用語としても爆発的に普及した。
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プラザ合意
1985年9月22日、ニューヨーク・プラザホテルに集まった米・日・西独・英・仏の先進5カ国蔵相・中央銀行総裁が、ドル高是正で協調介入することに合意した。翌年には円相場が1ドル240円から150円台へと急騰、日本経済は円高不況を経てバブル景気へ突入した。
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ポストヒューマン
ルネサンス以来の人間中心主義(ヒューマニズム)を批判的に越えようとする現代思想の潮流。N・キャサリン・ヘイルズ、ロージ・ブライドッティ、ダナ・ハラウェイらを代表論者とする。AI、脳科学、遺伝子工学、身体拡張技術の進展により、『人間/機械』『人間/動物』『自然/人工』の境界が溶解する現実に対し、人間を宇宙の中心に置く近代的人間観の再定義を迫る。技術による能力拡張を肯定するトランスヒューマニズムとは区別され、より批判的・脱中心化的な存在論を志向する。
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研究プログラム
イムレ・ラカトシュ(1922-1974)が提示した科学哲学の方法論。ポパーの反証主義とクーンのパラダイム論を統合し、科学理論を『堅い中核(放棄できない核心命題)』と『防護帯(補助仮説で修正可能な外縁)』の構造で捉える。進歩的プログラムと退行的プログラムの区別は、経営戦略における『コアとノンコア』の設計原理と同型である。
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政治的なものの概念
カール・シュミット(1888-1985)が1932年に刊行した政治哲学の問題作。政治的なものの本質を『友と敵の区別』と定義し、道徳・経済・美的領域から独立した政治の固有性を主張した。ナチス加担のため戦後批判されたが、『決断主義』『例外状態』『主権者とは例外状態を決定する者』などの概念は左右を越え現代政治理論に決定的影響を与え続けている。
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9.11同時多発テロ
2001年9月11日、イスラム過激派組織アルカイダによる航空機を使った同時多発テロ。ニューヨーク世界貿易センタービルとペンタゴンが攻撃され、約3000人が犠牲となった。冷戦終結後の世界秩序を「テロとの戦い」に転換させた決定的事件。
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動物の解放
オーストラリア出身の倫理学者ピーター・シンガー(1946-)が1975年に刊行した倫理学書。功利主義(ベンサム)の『苦しむ能力』を基準に、人間だけを特別扱いする『種差別(speciesism)』を人種差別・性差別と同じ不当な差別として告発した。工場畜産と動物実験の実態を暴いたことで動物解放運動を世界的に押し上げ、現代のプラントベースド食品市場・ESG・サステナビリティ思想の源流の一つとなった。
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ソ連崩壊
1991年12月、ソビエト連邦が15の独立国に解体した事件。70年にわたる社会主義体制と、40年以上続いた冷戦構造が同時に終結した。ゴルバチョフのペレストロイカを契機とした改革が、結果的に体制自体を解体に導いた。
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暗黙知
「我々は語れる以上のことを知っている」——ポランニーのこの命題は、言語化・形式化できないが確かに働いている知識の存在を示した。自転車の乗り方から顧客対応の勘所まで、暗黙知は人間の知的活動の広大な基層をなす。野中郁次郎の知識創造理論により経営学の中核概念となり、組織の競争優位の源泉として再発見された。
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トヨタ生産方式の確立
トヨタ自動車が戦後に確立した生産管理思想。大野耐一を中心に体系化され、「ジャストインタイム」と「自働化」を二本柱とする。無駄を徹底排除し、少量多品種を高品質・低コストで生産する仕組みとして、世界の製造業・サービス業に影響を与え続けている。
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トロッコ問題
1967年にフィリッパ・フット、1976年にジュディス・J・トムソンが定式化した倫理学の思考実験。暴走するトロッコが5人を轢き殺そうとしており、分岐器を切り替えれば1人だけが犠牲になる——切り替えるべきか。派生版(橋の上の太った男)と組み合わせて、功利主義と義務論、行為と不作為、意図と副次効果の倫理的差異を浮かび上がらせる。AI自動運転の倫理プログラミングで再注目されている。
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無知のヴェール
ジョン・ロールズ(1921-2002)が『正義論』(1971)で提示した思考実験。人が自分の性別・才能・財産・人種を知らない『原初状態』に置かれたら、どのような正義の原理を選ぶか。自己の立場を知らないからこそ、誰にとっても公正な制度を選ばざるを得ない——この装置が、20世紀後半の政治哲学を書き換えた。制度設計の公平性テストの原型。
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ウィーン学団
モーリッツ・シュリックを中心に1924年頃から活動したウィーン大学の哲学者・科学者集団。カルナップ、ノイラート、ゲーデルらが参加。論理実証主義の牙城として『検証可能な命題のみが有意味である』とし、形而上学・神学を無意味な疑似命題と断じた。ナチスの迫害で離散したが、現代分析哲学と科学哲学の基礎を築いた。
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言語ゲーム
「言葉の意味とは、言語におけるその使用である」——ウィトゲンシュタインは後期『哲学探究』で、言葉の意味を辞書的定義でなく、特定のルールと実践に埋め込まれた使用として捉えた。チェスの駒の意味がゲームのルールの中でしか成立しないように、言葉は生活形式の中で機能する。組織内の言葉の通じなさを解く根本的な視座を提供する。