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概要
聖書(せいしょ、Bible、ギリシャ語 biblia「書物群」)は、ユダヤ教とキリスト教の正典。単一の書物ではなく、多数の書物を集めた文集である。
世界で最も翻訳され、最も出版部数の多い書物。全世界で 3000 以上の言語に翻訳されている。
構成
旧約聖書
ユダヤ教の タナハ(Tanakh)と同じ内容。ヘブライ語(一部アラム語)で書かれ、紀元前 12 世紀〜紀元前 2 世紀頃に成立。
3 つの部分:
- 律法(トーラー、Torah)— 創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記
- 預言者(ネビイーム、Nevi’im)— 前期・後期の預言書
- 諸書(ケトゥビーム、Ketuvim)— 詩編、箴言、ヨブ記、伝道の書など
プロテスタントは 39 書、カトリックは 46 書(第 2 正典=アポクリファを含む)。
新約聖書
キリスト教固有の正典。ギリシャ語で書かれ、紀元 1 世紀後半〜2 世紀前半に成立。27 書。
- 4 福音書 — マタイ・マルコ・ルカ・ヨハネ
- 使徒言行録 — 初期教会史
- パウロ書簡 13 — ローマ書、コリント書など
- 一般書簡 8 — ヘブライ書、ヤコブ書、ペテロ書など
- 黙示録 — ヨハネ黙示録
翻訳史
ヘブライ語 → ギリシャ語
- 七十人訳(セプトゥアギンタ、前 3〜前 2 世紀)— 初期キリスト教が使用
ギリシャ語 → ラテン語
- ウルガタ訳(ヒエロニムス、4 世紀末)— 西欧中世の標準
各国語訳
- ルター訳ドイツ語聖書(1534) — 近代ドイツ語の基礎
- 欽定訳英語聖書(KJV、1611) — 近代英語と英文学に巨大な影響
- 日本語聖書 — 明治元訳(1887)、口語訳(1955)、新共同訳(1987)
文化的影響
聖書は西洋文明の精神的インフラである:
- 文学 — ダンテ、ミルトン、トルストイ、ドストエフスキー、T.S.エリオット
- 美術 — ジョット、ミケランジェロ、ラファエロ、レンブラント
- 音楽 — バッハ、ヘンデル、モーツァルト、ベートーヴェン
- 法・政治思想 — 自然法、人権、平等思想の起源
- 日常語 — 「目から鱗」「豚に真珠」など聖書起源の慣用句
現代への示唆
聖書は、2000 年を超えて機能する「組織の文書」のモデルを示す。
- 複数著者・多様なジャンルの統合 — 歴史書・詩・律法・預言・手紙などが一体となる
- 矛盾を抱えたままの正典化 — 完璧に整合的でなくても、全体として生きた文書になる
- 翻訳と再解釈の伝統 — 原本保存と同時に、時代・文化ごとの再読を許容する柔軟性
- 個人の暗記による内面化 — 読むだけでなく、記憶し引用する文化
企業の社史・行動規範・経営者の著作集が「社内聖書」と呼ばれることがあるが、長期にわたり機能する文書群とは何か——この問いへの最古の答えが聖書である。
関連する概念
旧約聖書 / 新約聖書 / [福音書]( / articles / gospels) / ヘブライ語 / ウルガタ / 欽定訳聖書
参考
- 原典: 『新共同訳聖書』日本聖書協会、1987
- 研究: 加藤隆『新約聖書はなぜギリシャ語で書かれたか』大修館書店、1999