脳の可塑性と40代以降の学び直し——シナプスは老いない
成人の脳も再配線する。ロンドンのタクシー運転手の海馬肥大研究から、40代以降の学習戦略を神経科学で組み立て直す。
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ドーパミン報酬系は、腹側被蓋野・黒質から側坐核・前頭前野へ投射するドーパミン作動性回路を中心とする。かつては快の信号と見なされたが、現在は主として報酬予測誤差——予想と結果の差——を伝える学習信号として理解されている。動機づけ、探索、習慣形成の基盤をなす。
ダニング・クルーガー効果は、ある領域で能力の低い者ほど自分の能力を過大評価し、能力の高い者ほど控えめに評価する傾向として知られる。一九九九年のダニングとクルーガーの論文で定式化された。メタ認知の欠如を本質とする解釈が広まる一方、統計的アーティファクトとしての側面にも方法論的議論がある。
学習性無力感(learned helplessness)は、セリグマンとメイヤーが一九六七年にイヌを用いた実験で報告した現象で、制御不能な嫌悪刺激への反復曝露が、後の状況での能動的回避行動を抑制する。抑うつや組織的機能不全の理解に応用され、その後の研究では「受動性が初期設定であり、制御可能性の学習こそ重要」とする再定式化が進んでいる。
記憶の固定化(memory consolidation)は、新たに獲得された情報が短期的な脆弱な状態から長期記憶へ移行し、神経回路に安定的に保持されるようになる過程を指す。シナプス水準の分子的固定と、海馬から新皮質へ記憶表象が徐々に移行するシステムレベル固定の二層で理解されている。
神経可塑性(neuroplasticity)は、経験や学習、損傷に応じてニューロン間の結合が再編される性質を指す。かつて成人脳は固定的とみなされていたが、二十世紀後半以降の研究により、シナプス強度の変化から大脳皮質の地図の書き換えまで、幅広い水準で脳が変容し続けることが確認されている。
睡眠は単なる休息ではなく、記憶の固定化、情動の再調整、代謝老廃物の除去、シナプス強度の再編成など、脳にとって能動的な処理時間である。徐波睡眠とレム睡眠が異なる機能を担うこと、慢性的な睡眠不足が認知と判断を広範に損なうことが示されている。