『西遊記』に学ぶ、異質な仲間で長旅を完遂する条件
三蔵・孫悟空・八戒・沙悟浄。能力もモチベーションもバラバラな一行が17年の旅を完遂した。多様性経営の原型がそこにある。
文学
主なテーマ
ジョージ・オーウェルが一九四九年に刊行した長編小説。核戦争後の超国家オセアニアで、党と指導者ビッグ・ブラザーがあらゆる生活を監視する。真理省に勤める下級党員ウィンストン・スミスは、禁じられた日記を書き、党員ジュリアと恋に落ち、地下組織を探すが、全ては党の仕掛けだった。拷問と洗脳の末、彼は「ビッグ・ブラザーを愛していた」と呟いて破滅する。
レフ・トルストイが一八七三年から七七年にかけて執筆した長編小説。高級官僚の妻アンナ・カレーニナが、若き士官ヴロンスキーと恋に落ちて家庭を捨て、社交界から疎外され、最後には鉄道自殺を遂げる。地主レーヴィンとキチイの結婚生活と並行して描かれ、家族・階級・信仰・農業近代化といった同時代ロシアの全主題を網羅する。
紀元前八世紀ごろ成立したとされる古代ギリシアの長大な叙事詩。全二十四歌、約一万五千行にわたり、トロイア戦争十年目に起きたアキレウスの怒りと、それがもたらす破局を描く。西洋文学の源流とされ、英雄の栄光と人間の有限性を主題化した最古の作品である。
シェイクスピアが一五九六年から九八年にかけて執筆した喜劇。ヴェニスの商人アントーニオは、友人バッサーニオのために金貸しシャイロックから大金を借り、期限までに返せなければ胸の肉一ポンドを与えるという証文を交わす。船団の遭難で返済が不能となり、シャイロックは証文通りの実行を法廷で求める。ユダヤ人差別・商業倫理・愛と友情を絡めた両義的な作品。
俳諧師松尾芭蕉が、一六八九年、四十六歳の春に門人曾良を伴って江戸深川を発ち、奥州・出羽・北陸を巡って大垣に到る約百五十日の旅をもとに、晩年まで推敲を重ねて成立させた俳諧紀行文。全五十一章段に、約五十句の発句が散りばめられる。「月日は百代の過客にして」で始まる冒頭は、日本紀行文学の金字塔として知られる。
『イーリアス』と並ぶホメロスの代表作。全二十四歌で、トロイア戦争後に故郷イタケへ帰還しようとするオデュッセウスの十年間の放浪と、王国再奪回を描く。怪物・魔女・冥界を経巡る冒険と、知略による生還の物語が、西洋における「旅」の原型を作った。
フョードル・ドストエフスキーが一八七九年から八〇年にかけて雑誌連載し刊行した最後の長編小説。放蕩な父フョードル・カラマーゾフと、激情家のドミートリー、無神論者のイワン、信仰者のアリョーシャ、私生児スメルジャコフという三人と一人の息子が、父殺しをめぐって交錯する。宗教・倫理・自由意志・社会変革の全問題を一篇に収めた思想小説の頂点である。
アイルランドの聖職者ジョナサン・スウィフトが一七二六年に刊行した諷刺小説。船医レミュエル・ガリヴァーが四度の航海で、リリパット(小人国)、ブロブディンナグ(巨人国)、ラピュータ(空飛ぶ島)、フウイヌム(馬の国)を訪れる。各国を通して当時のイングランド政治、学問の虚飾、人間性そのものを痛烈に風刺した近世文学の代表作。
イングランドの詩人ジェフリー・チョーサーが一三八七年ごろから執筆した物語集。カンタベリーの聖トマス・ベケットの墓を訪れる二十九人の巡礼者たちが、旅の退屈を紛らわすために語る二十四の物語を収める。騎士から粉屋、修道女から税吏まで、中世イングランド社会の全階層を活写した傑作である。
アメリカの作家F・スコット・フィッツジェラルドが一九二五年に刊行した長編小説。禁酒法時代のロングアイランドで、謎の富豪ジェイ・ギャツビーが、かつて愛した人妻デイジー・ブキャナンの関心を取り戻そうと毎晩豪奢なパーティを開く。語り手ニック・キャラウェイの視点から、華やかな一九二〇年代の裏にあるアメリカン・ドリームの幻想と空虚を描く。
英国の作家オルダス・ハクスリーが一九三二年に刊行したディストピア小説。西暦二五四〇年の世界国家では、人間は試験管で製造され階級ごとに条件づけられ、不安は薬物ソーマで抑えられる。安定と幸福が何よりも優先され、芸術・宗教・家族は廃絶される。保留地で育った「野蛮人」ジョンの出現が、文明の空虚を照射する。オーウェル的恐怖統治とは異なる快楽的隷属の原型。
フィレンツェの作家ジョヴァンニ・ボッカチオが一三四九年から一三五三年にかけて執筆した物語集。黒死病が猛威を振るう都市を逃れた七人の女性と三人の男性が、郊外の別荘で十日間にわたり一人一日一話、計百話を語る。中世の宗教的世界観を相対化し、ルネサンスの到来を告げた記念碑的作品である。
シェイクスピア晩年のロマンス劇で、単独執筆の最後の戯曲。ミラノを追放された大公プロスペロは、孤島で魔術を修め、幼い娘ミランダと精霊エアリエル、怪物キャリバンと暮らす。十二年後、弟らが乗る船を嵐で島に導き、復讐の機会を得るが、最後には魔術を捨てて赦しを選ぶ。作家自身の引退を重ねて読まれてきた作品である。
ミゲル・デ・セルバンテスが前篇一六〇五年、後篇一六一五年に刊行した長編小説。騎士道物語を読みすぎて狂気に陥った郷士アロンソ・キハーノが、ドン・キホーテと名乗って遍歴の騎士となり、従士サンチョ・パンサを従えて妄想と現実のはざまを旅する。近代小説の始祖とされ、理想主義と現実主義の永遠の対比を刻んだ。
アメリカの作家マーク・トウェインが一八八四年に刊行した長編小説。酔漢の父から逃れた少年ハックが、売り飛ばされそうな黒人奴隷ジムと出会い、二人でミシシッピ川を筏で下る。南部社会の偽善・奴隷制・宗教・暴力を、子どもの素朴な視点から描くアメリカ文学の古典で、ヘミングウェイは「すべての近代アメリカ文学はこの一冊から始まる」と評した。
ウィリアム・シェイクスピアが一六〇〇年ごろに執筆した四大悲劇の一つ。デンマーク王子ハムレットは、父王を殺して母と結婚した叔父クローディアスへの復讐を亡霊から命じられる。実行を躊躇しながら狂気を装い、内省の言葉を重ねる王子の姿が、近代的な自意識の原型として文学史に刻まれた。
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテが六十年近い歳月を費やして書き上げた劇詩。第一部は一八〇八年、第二部は一八三二年、ゲーテ没後に刊行。あらゆる知を極めた老学者ファウストが、悪魔メフィストフェレスと魂を賭けた契約を結び、快楽・権力・美・事業を経めぐる。近代精神の野心と限界を凝縮した二万行超の大作である。
アルベール・カミュが一九四七年に刊行した長編小説。アルジェリアの港町オランが突然ペストに襲われ、都市は封鎖される。医師ベルナール・リウーを中心に、新聞記者タルー、カトリックの神父パヌルー、役人グランらが、それぞれの立場で疫病と戦う。ナチズムの隠喩として読まれると同時に、不条理な災厄に対する連帯の倫理を描いた二十世紀文学の重要作である。
シェイクスピア四大悲劇の一つ。スコットランドの勇猛な武将マクベスが、荒野で出会った三人の魔女から王となる予言を受け、妻の唆しで主君ダンカン王を暗殺する。王位に就いた後も疑心暗鬼に駆られ殺戮を重ね、最終的には自らも討ち取られる。権力への野心が人間を蝕む過程を極限まで凝縮した短篇悲劇である。
アレクサンドル・デュマ(父)が一八四四年から四六年にかけて新聞連載した長編冒険小説。有能な若き船員エドモン・ダンテスは、嫉妬と陰謀により政治犯として十四年間シャトー・ディフの牢獄に閉じ込められる。脱獄後、モンテ・クリスト島の宝を得て莫大な富を手に入れ、モンテ・クリスト伯爵としてパリに現れ、周到な計画で敵たちを一人ずつ破滅させていく。
アイルランドの作家ジェイムズ・ジョイスが一九二二年にパリで刊行した長編小説。一九〇四年六月十六日、ダブリンの広告取りレオポルド・ブルームと、知識人青年スティーヴン・ディーダラスの一日を、全十八エピソードで描く。各章は異なる文体で書かれ、ホメロス『オデュッセイア』と対応する構造を持つ。意識の流れ手法を駆使した二十世紀モダニズム文学の頂点。
シェイクスピア四大悲劇の一つ。老いたブリテン王リアは、三人の娘の愛情表現の大きさによって王国を分割しようとする。追従する長女と次女に領土を与え、誠実な三女コーディーリアを追放する。やがて長女と次女に裏切られたリアは、嵐の荒野で狂気に陥り、真の愛情に遅れて気づく。権力と認識の錯誤を極限で描いた作品である。
フランスの大作家ヴィクトル・ユゴーが亡命中の一八六二年に刊行した五部構成の大長編。徒刑囚ジャン・ヴァルジャンが司教の慈悲によって更生し、市長として生き直し、養女コゼットを育てる。革命家たちのバリケード戦、宿敵ジャヴェール警視との因縁、一八三二年のパリ蜂起を背景に、社会の悲惨と人間の尊厳を描ききった十九世紀小説の金字塔。
イングランドのダニエル・デフォーが一七一九年に刊行した長編小説。航海に憧れた商人の息子ロビンソン・クルーソーは、難破して無人島に一人漂着し、二十八年にわたって生存を続ける。道具を作り、農耕を始め、フライデーを従者にし、ついには救出される。ブルジョア的労働倫理と植民地主義を体現した近代小説の金字塔である。
フランスの作家アルベール・カミュが一九四二年に刊行した最初の長編小説。アルジェのサラリーマン、ムルソーは母の葬儀で涙せず、翌日には海水浴と情事を愉しみ、やがて太陽に眩んで見知らぬアラブ人を殺害する。裁判では殺人そのものより「母の葬儀で泣かなかった」ことが非難され、死刑を宣告される。不条理の哲学を小説化した二十世紀文学の金字塔である。
アメリカのSF作家レイ・ブラッドベリが一九五三年に刊行した長編小説。書物の所持が禁じられ、消防士(ファイアマン)が火を消す代わりに本を焼くことを任務とする近未来社会。消防士ガイ・モンターグは、奇妙な隣人クラリスとの出会いを経て、自分が焼く本に何が書かれているかを問い始める。書名は紙の発火点とされる華氏四五一度(摂氏二三三度)に由来する。
清代中期、曹雪芹(一七一五頃-一七六三頃)が晩年に書いた長編小説。前八十回が曹の手稿、後四十回は高鶚の続作とされる。清朝の貴族賈家を舞台に、詩才ある少年賈宝玉と、虚弱な従妹林黛玉、現実家の薛宝釵との三角関係、栄華を極めた賈家の没落を描く。人物造形の深さと詩文の豊かさにおいて、中国小説の最高峰とされる。
フョードル・ドストエフスキーが一八六六年に雑誌連載した長編小説。ペテルブルクの元大学生ラスコーリニコフは、「非凡人は法を踏み越えてよい」という独自の論理に基づき、高利貸しの老婆とその妹を斧で殺害する。しかし予期に反して良心の呵責に苦しみ、聖娼ソーニャとの出会いを経て自首に至る。思想と良心の葛藤を凝縮した心理小説の傑作。
元末明初の文人羅貫中に帰される歴史小説。後漢末の黄巾の乱(一八四年)から西晋による統一(二八〇年)までの約百年を題材に、魏・蜀・呉の三国の興亡を描く。歴史書『三国志』と講談・民間伝承を素材にしつつ、劉備・関羽・張飛・諸葛亮を中心とする蜀漢に視点を置く。中国四大奇書の一つで、東アジア全域の軍略論・処世論の原典となった。
フランスの作家マルセル・プルーストが一九〇九年頃から死の直前まで書き継いだ七部構成の大長編。全三千ページを超える。十九世紀末から第一次世界大戦後の貴族社会・芸術家・恋愛を舞台に、語り手「私」の幼時からの記憶と芸術の完成への自覚を、精緻な文体と「無意志的記憶」の発見を通じて描く。二十世紀文学の最高峰の一つ。
イングランドの詩人ジョン・ミルトンが盲目の晩年に口述で完成させた十二巻の叙事詩。旧約聖書の創世記を題材に、神への反逆を企てたサタンの堕落と、エデンの園のアダムとイヴが蛇の誘惑によって禁断の実を食べ、楽園を追放される物語を描く。英語で書かれた叙事詩の最高峰であり、自由と服従、知と罪の主題を提起した。
二十四歳のゲーテが一七七四年に刊行した書簡体小説。若き芸術家ウェルテルが、友人に宛てて書き送る手紙の形式で、婚約者のいるロッテへの片思いの激情と絶望を描く。最後にウェルテルは自殺する。全ヨーロッパに爆発的な反響を呼び、青年たちの模倣自殺を生んだ疾風怒濤期の記念碑的作品である。
フランツ・カフカが一九二二年に執筆し未完のまま残した最後の長編小説。遺言に反してマックス・ブロートが一九二六年に刊行した。雪の夜、測量士を称する男Kが辺境の村に到着する。丘の上の城から仕事を依頼されたというが、城との接触はあらゆる手段で阻まれる。Kは村人・官僚・使者たちの迷宮のなかで足踏みを続ける。近代の疎外と制度へのアクセス不能を象徴する作品。
フランツ・カフカが一九一四年から一五年に執筆し、未完のまま残した長編小説。遺言で焼却を求められたが友人マックス・ブロートが一九二五年に刊行した。銀行員ヨーゼフ・Kはある朝、理由も告げられず逮捕される。以後一年にわたり罪状不明の裁判手続きに翻弄され、結局わからぬまま最後は「犬のように」処刑される。官僚制と近代的不条理の象徴となった作品である。
フィレンツェの詩人ダンテ・アリギエーリが亡命中の一三〇〇年代に執筆した全一万四千二百三十三行の叙事詩。「地獄篇」「煉獄篇」「天国篇」の三部からなり、ウェルギリウスとベアトリーチェに導かれて来世を巡る旅を描く。ラテン語ではなくトスカーナ方言で書かれ、イタリア語の標準化に決定的な役割を果たした。
元末明初に成立したとされる長編章回小説。施耐庵が著し羅貫中が補訂したとも伝わる。北宋末、政治の腐敗によって各地で罪を負い追われた百八人の好漢たちが、山東の梁山泊に集結し、官軍と戦い、最後には朝廷の招安を受けて遼や方臘討伐に従事する。義賊のピカレスク叙事として、中国四大奇書の一つに数えられる。
ロシアの文豪レフ・トルストイが一八六五年から六九年にかけて発表した大長編小説。一八〇五年から一八一二年のナポレオン戦争期を背景に、ボルコンスキー家、ロストフ家、ベズーホフ家、クラーギン家の貴族たちの生涯を織り交ぜて描く。五百人を超える登場人物と、歴史を動かす個人の役割を問う哲学的考察が結合した、十九世紀リアリズム文学の最高峰。
九世紀末から十世紀初頭に成立したとされる、仮名で書かれた現存最古の日本物語。竹取の翁が光る竹の中から見いだした三寸ばかりの女児が、三ヶ月で美しい姫に成長する。五人の貴公子の求婚を難題で退け、帝の求愛もかわしたかぐや姫は、やがて自身が月の都の者であることを明かし、八月十五夜に月からの迎えに伴われて昇天する。
南北朝期の僧兼好法師(卜部兼好)が一三三〇年前後までに書いた随筆。全二百四十三段からなり、仏道・武士・恋愛・学問・教養・世俗の愚かさなど、多様な話題に及ぶ。無常観を基調としながらも、人間観察の鋭さと機知、教訓と諧謔の混在が特徴。『枕草子』『方丈記』と並ぶ日本三大随筆の一つで、江戸期以降は教養の必読書となった。
ジョージ・オーウェルが一九四五年に刊行した寓話小説。イギリス郊外のマナー農場で、搾取される動物たちが老豚メイジャーの演説に触発されて農場主ジョーンズを追放する。しかし指導者となった豚ナポレオンは次第に独裁化し、最終的には「すべての動物は平等である。だが、ある動物は他の動物より平等である」という一文だけを残して、追放した人間と見分けがつかなくなる。ロシア革命の寓話として書かれた。
アメリカの作家ハーマン・メルヴィルが一八五一年に刊行した長編小説。捕鯨船ピークォド号に乗り組んだ青年イシュメールが語り手となり、白い巨鯨モービィ・ディックに片足を奪われた船長エイハブの執念の追跡を描く。捕鯨業の詳細な記述と、象徴に満ちた形而上的思索が融合した、アメリカ文学を代表する長編である。
アメリカの作家ナサニエル・ホーソーンが一八五〇年に刊行した長編小説。十七世紀のボストン清教徒植民地で、夫不在の間に娘を産んだヘスター・プリンは、姦通の罪として胸に緋色のAの文字を縫い付けられて晒される。彼女は相手の名を明かさず、若き牧師ディムズデイルの内面は罪責感に蝕まれていく。罪・恥・共同体・個人の尊厳を主題とする。
コロンビアの作家ガブリエル・ガルシア=マルケスが一九六七年に刊行した長編小説。ジャングルの中に建設された架空の村マコンドを舞台に、ブエンディア家七代の栄枯盛衰を約百年にわたって辿る。空飛ぶ絨毯、四年間降り続く雨、人間の昇天といった奇跡的事象が日常として語られる「魔術的リアリズム」の代表作。一九八二年のノーベル文学賞受賞の決定打となった。
十三世紀前半までに成立したとされる軍記物語。作者は不詳。平清盛を中心とする平家一門の栄華から、源氏との治承・寿永の乱(一一八〇-一一八五)、壇ノ浦での滅亡までを描く。琵琶法師の平曲として語り継がれる過程で増補と改訂が重ねられた。「祇園精舎の鐘の声」で始まる冒頭は、日本人の無常観を凝縮する名文として知られる。
チェコ出身のドイツ語作家フランツ・カフカが一九一五年に刊行した中篇小説。ある朝、営業マンのグレーゴル・ザムザがベッドで目を覚ますと、自分が巨大な虫(ウンゲツィーファー)になっていた。出勤できず家族からも徐々に疎まれ、孤立のなかで衰弱して死ぬ。家族制度・労働・身体・疎外をめぐる現代の寓話として、二十世紀文学を象徴する作品となった。
元神職の鴨長明が一二一二年に著した随筆。冒頭「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」の一節で知られる。前半は京都を襲った大火・辻風・遷都・飢饉・地震といった災害を記録し、後半は日野山の方丈(約二・七メートル四方)の庵に独居する晩年の生活を描く。無常観のもとに書かれた中世日本の代表的随筆。
ドイツの作家トーマス・マンが一九二四年に刊行した長編小説。ハンブルクの青年ハンス・カストルプは、スイス・ダヴォスの結核療養所にいる従兄を三週間の予定で見舞いに訪ねる。しかし自身も感染していると診断され、七年間滞在することになる。山の密度の濃い時間のなかで、人文主義者セテムブリーニとイエズス会士ナフタの論争を聴き、愛と死と形而上学を経験する教養小説の金字塔。
一条天皇の中宮定子に仕えた女房清少納言が、一〇〇〇年頃までに書いた随筆。約三百段からなり、「春はあけぼの」で始まる四季の情景、「うつくしきもの」「にくきもの」といった類聚段、日記的章段が混在する。鋭い観察、優雅と機知、短く区切る文体によって、日本随筆文学の嚆矢となった。
七世紀から八世紀半ばまでの約四百年間の和歌約四千五百首を集めた、現存する日本最古の歌集。全二十巻。大伴家持が最終的な編纂に関わったとされる。天皇・皇族・貴族のみならず、東国の農民や九州の防人、遊行女婦の歌までが収められ、万葉仮名で表記される。素朴で力強い感情表現を特徴とし、後代の宮廷歌集とは異なる古代日本の息吹を伝える。
アメリカの作家アーネスト・ヘミングウェイが一九五二年に発表した中篇小説。キューバの老漁師サンチアゴは、八十四日間不漁の末、メキシコ湾流に船出し、巨大なカジキマグロと三日三晩の格闘の末についに仕留める。しかし帰路で鮫に食い尽くされ、帰港したとき残ったのは骨だけだった。ピューリッツァー賞を受賞し、翌年のノーベル文学賞の決定打となった晩年の代表作である。