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概要
マクスウェル方程式は、電磁場の振る舞いを記述する4つの偏微分方程式である。ガウスの法則(電場の発散)、磁場のガウスの法則(磁気単極子の不在)、ファラデーの法則(磁束変化による起電力)、アンペール=マクスウェルの法則(電流と変位電流による磁場)からなる。
スコットランドの物理学者ジェームズ・クラーク・マクスウェル(1831-1879)が1864年の論文「電磁場の動力学的理論」と著書『電気磁気論』(1873)で体系化した。
発見の背景
19世紀前半、クーロン、アンペール、エルステッド、ファラデーの実験により、電気と磁気の個別現象が次々と明らかになった。ファラデーは電気力線・磁力線という場のイメージを提唱したが、数学的形式化には至らなかった。
マクスウェルはファラデーの場の概念を数理化し、さらに変位電流という新項を導入してアンペールの法則を拡張した。これにより電場と磁場は相互に生成し合う関係となり、方程式から波動方程式が導出された。計算された伝播速度は、当時測定されていた光速とほぼ一致した。ここからマクスウェルは、光は電磁波の一種であると予言した。
1888年、ハインリッヒ・ヘルツが電磁波の発生と検出に成功し、予言が実証された。マルコーニの無線通信、レントゲンのX線、無線工学、ラジオ、テレビ、レーダー、携帯通信——すべてがマクスウェル方程式の応用である。
意義
マクスウェル方程式は、異質に見える現象の統一のモデルを示した。電気と磁気と光という、別個の現象と見なされていたものが、単一の場の理論で記述された。
さらに、アインシュタインの特殊相対性理論(1905)は、マクスウェル方程式がガリレイ変換で不変でないことの解消から生まれた。方程式の形式的美しさが物理学を動かすという、以後の理論物理の様式を確立した。
現代への示唆
統合が新しい実体を生む
電気と磁気を統合する中で、変位電流という既存実験にない項が必要となった。組織でも、部門統合の過程で、単独部門にはなかった新しい機能が要請される。統合は既存要素の合算ではなく、新しい実体の創発である。
対称性への感度
マクスウェル方程式は、電場と磁場の対称性を軸に構築された。対称性の破れを見つけたら追求する姿勢は、科学に限らず戦略策定にも通じる。競合と自社の非対称性、市場と組織の構造的ズレ、これらが機会の源泉である。
数式は予言する
マクスウェルは電磁波を計算によって発見し、20年後に実験が確認した。良いモデルは実測に先行する予言力を持つ。経営モデルも同様で、シミュレーションで先に結論を得てから実験するほうが、盲目的な試行より速く確実に学べる。
関連する概念
- 電磁波
- 特殊相対性理論
- ファラデー
- 場の理論
- ヘルツの実験
参考
- J.C.マクスウェル『電気磁気論』(邦訳『マクスウェル電磁気学』丸善)
- 太田浩一『マクスウェルの渦 アインシュタインの時計』東京大学出版会、2005
- B.J.ハント『マクスウェリアンズ』名古屋大学出版会、2017